1 八幡様とは
八幡神社はほぼ全国に存在するといわれており、八幡大神(応神天皇・誉田別命)を主祭神として、応神天皇の母である神功皇后と比売大神を祀っていることが多いです。
比売大神は一柱の神様ではなく、多岐津姫命(タギツヒメノミコト)、市杵嶋姫命(イチキシマヒメノミコト)、多紀理姫命(タギリヒメノミコト)の3女神であるとされることが多いです。
八幡様の起源は大分県宇佐市にある宇佐神宮です。
2 なぜ、八幡神社は全国にあるのか
八幡大神は奈良の都で疫病が流行った際、当時の聖武天皇が奈良に大仏を造ろうとした際は、「我が力を持って必ず完成させる」と託宣を行い、仏教の僧である道鏡が天皇になろうとしたときには、「皇族以外が天皇になることは神の意志に反する」と託宣し、朝廷を援護しており、朝廷を加護する国家鎮護の神としての立ち位置を得たことが全国に広まった要因と思われます。
また、八幡大神は武神としても名高く、源氏の源頼朝が八幡大神を信仰していたことで、各地の武家が八幡信仰をまねたことも要因にあると思われます。
3 八幡大神の特殊性
(1) 話す神
先ほど、託宣によって、八幡大神は国家鎮護の神としての立ち位置を得たと述べましたが、そもそも日本において「話す神」というのは珍しい存在です。例えば、キリスト教ではミサと呼ばれるイエスキリストの死と復活を記念し、死者であるイエスキリストに願いを捧げる、神様と対話をする行事があります。対して神道はそのような行事はおそらくありません。(お盆に死者に祈るのは仏教行事です。)
理由としては、日本の気候は温帯〜亜熱帯に属し特に夏の高温多湿が顕著であるため、死後の腐敗が急速に進みやすく、死体の保管に際して衛生上の懸念が特に大きく、死体を穢れとして畏怖する風潮があることでしょうか。
日本人は死者や神様などの見えないものに対して、距離をおく風潮があると思われます。
よって、死者や神様といった見えないものと会話をするといった行動は大陸的、ヨーロッパ的と思われます。
(2) 九州は朝鮮半島等とのやり取りの窓
八幡神社の総本山である大分宇佐市をはじめ、北九州は朝鮮半島とも近く、大陸の文化が最も早く輸入される場所であるといっても過言ではありません。実際、北九州地域には秦氏と呼ばれる渡来人が住んでおり、八幡大神は日本古来の神様※1でありながら、大陸の要素も兼ね備えた神様なのではないでしょうか。
※1 八幡大神を日本古来の神ではなく秦氏が信仰していた外国の神様であるという説もあります
(3) 八幡(やはた)様から八幡(はちまん)様、八幡(はちまん)大菩薩へ
八幡(やはた)様は訓読みですので、日本古来の神様でありそうです。その後、おそらく大陸から仏教が輸入された際に、中国読みである八幡(はちまん)様に、さらには仏教の神格である菩薩になっていったものと思われます。奈良時代から神仏集合が始まっていったといいますが、一番のさきがけは宇佐八幡宮なのかもしれません。
(4) なぜ応神天皇となったのか
先に述べたとおり、八幡(やはた)様はおそらく、もともとただの地域の神様です。しかし、大陸の影響を受けており、話すことができる神様であったことから、朝廷から重宝され、のちに、朝廷の先祖神である応神天皇をあてがわれたのだと推察されます。
4 まとめ
八幡大神は日本全国で信仰されている神様ですが、一番、大陸の影響をうけた話すことができる神様であり、朝廷の加護を受け、地域の神様から、朝廷の先祖神にまで上り詰めた特殊な神様なのかもしれません。