今日はお昼過ぎに起きたので、ネットフリックスで夏目友人帳10話「アサギの琴」を見ました。
無駄に深堀しようと思います。
はじめは夏目が空を眺めるところからはじまります。ひつじ雲が空に映し出され、セミが鳴いています。
ひつじ雲は高積雲といって、9月から11月の秋の空にできやすいとされています。
今話ではセミが鳴いていますので夏なのでないかと推察されます。
夏の空にひつじ雲ができるのは寒気が流れ込んでいることが多く、天気が崩れる前触れといわれています。
このカットは今後夏目にふりかかる災いを暗示しているものと思われます。
weathernewより画像引用( https://weathernews.jp/s/topics/201709/140195/)
夏目の前に用心棒のような男の妖アカガネが現れます。
アカガネの腰には赤いひょうたんがぶら下がっており、ひょうたんにはアサギという琴を引く女の妖が憑依しており、アカガネはアサギが憑依できる器を探していました。
アカガネは妖が見える夏目にアサギを憑依させます。
アカガネ「眠っている間にアサギをおまえの体の中に入れさせてもらった。上手いこと同化できているみたいだな」
夏目は自分の中に憑依しているアサギと話をしました。
アサギ「申し訳ありません。やめるように言ったのですが...悪いのは私なのです」
にゃんこ先生に妖を体からだす方法を聞くと、アサギの希望を叶えるしかないとのこと。
夏目「アサギとアカガネはどういう関係なんだい」
アサギ「アカガネは傘持ちだったのです。磯月の森には壬生様が認めた才能ある者たちが集まっておりました。壬生様やそれらの者たちに傘をさしかけたり、用心棒として皆を守るのがアカガネの役割なのです。アカガネはとても腕がたつのですよ。磯月は美しいところでした。夢のように...いつまでも居たかった。ずっと壬生様のおそばで生きていくのだと思っていた。ずっと、ずっと」
アサギは壬生様のもとに居たかったことがわかります。徳川光圀が詠んだ和歌の中に「磯月」という題名のものがあります。
【 荒磯の 岩にくたけて ちる月を ひとつになして 帰る浪かな 】
これは、茨城県の大洗の地で、水面に写っている月が岩に当たって砕けて、またひとつになって戻っていく情景を詠んだ詩です。
昔、大洗にいったときに、大洗磯前神社の前で撮影した写真ですが、確かに夜になれば和歌のような情景になりそうです。
憑依された夜、夏目は悪夢にうなされて目覚めます。夏目の指が崩れていく悪夢です。
目覚めるとアカガネがそばにいました。
アカガネ「起こしたか、夏目。アサギの指ではもう琴はひけない。体が乾いた土のように崩れていく病気だ。もう戻れない。あいつが笑っているのをみたのは壬生様の御前で幸せそうに楽を奏でていたのが最後だった。その演奏中、突然、肌が崩れ始めた。白く伸びる指も、光る頬も。あこがれてやまない壬生様の前で。明日は満月、磯月への道が一時だけひらく。最後にもう一度だけでも壬生様の前でひかせてやりたい。」
神話には垂直的な世界と水平的な世界があります。垂直的な世界では神様は天界にいるとされており、水平的な世界では神様は海の向こうにいるとされております。水平的な世界では、海が神様の世界と私たちの世界を隔てる境界になります。満月の夜には、太陽と月の引力によって大潮となり、今まで陸地であったところまで、境界である海が近づいてくるため、神様の世界への道がひらけると考えられているようです。(日本に限らず、海外でも狼男など満月の夜に不思議な力を持つような話が存在。)
この磯月への道が満月の夜にひらくのもこのような考えを取り入れたものと考えられます。
アカガネと夏目は琴を作るために森の中で竹の生えた切株を探しだし、アカガネは琴を作ります。その横で夏目は横になります。
夏目(気分が悪くなってきた。このざらっとした熱っぽいだるさはアサギのか。こんなに弱って演奏なんかしたらアサギの命が...)
演奏をすると、アサギの命が危険にされされることがわかります。
夏目が目覚めると琴が出来上がってました。
アカガネは琴を持って磯月の森に向かおうとしますが...
アサギ「叶うならもう一度だけでも弾きたいと思った。ずっと、ずっとあの方のためにだけ弾いてきた。だから、もしもう一度弾くことが叶うのなら優しくて大切な友人のため、あなたのために弾きたいと思っていた。アカガネ聞いてくれますか。」
アサギの演奏中、水面に写る月がさざなみで揺れ、月の形が崩れます。
徳川光圀が詠んだ和歌「磯月」を彷彿とさせるような描写です。これは月が壊れることによって、アサギが亡くなったことを暗示していると思われます。和歌「磯月」のように壊れた月はまたひとつになって戻ってくるはずです。
夏目(遠くで音楽が聞こえた。聞いたことのないような美しい音。まるで、空に落ちるようにアサギは僕から離れていった)
夏目「これからどうするんだ」
アカガネ「アサギをつれて里へ帰る。深く深く眠っただけだよ...」
アカガネは地蔵がいるY字路を左にあるいて行きました。
夏目(残されていった琴を弾いてみたけれど、もうあんな美しい音はでなかった。あの音は俺の指ではなく彼女の心が奏でたのだろう)
琴に前を桜の花びらが落ちてくる描写でEDへつながります。
桜は始まりを表現していると思われます。壊れた月がまたひとつになってもどるようにアサギもまた何かになっているのではないでしょうか。実際、10話では、夏目友人帳にしては珍しく、「地蔵」の描写もおおく、地蔵は仏教ですので、そこでも輪廻転生を表現しているのかもしれません。